一般社団法人CO-SAKU谷シモキタFABコーサク室は、2024年11月〜2025年2月の約4ヶ月間、学校法人自由学園(東京都東久留米市)の「超本格高校生インターンプログラム『飛び級社会人』」で同学園の高校生3名を受け入れていました。その集大成となる発表会「学びの共有会」が3月1-2日に開催され、コーサク室スタッフも学園にお邪魔してきました。コーサク室に来てくれていた3人は、彼らが製作したリヤカーロボのワークショップを開催し、さらにインターンでの学びを発表。その様子を、少しご紹介します。(これまでの様子は、コーサク通信の記事でご紹介しています)
リヤカーロボ操縦体験
自由学園の生徒さんたちは、自分たちで食事を作ります。その食材を運ぶのも、彼らのお仕事のひとつ。広い敷地内、大きなリヤカーを引っ張って、まるでトラップのようなデコボコ道も積荷を落とさず運んでいかなくてはなりません。この自由学園ならではの生活体験を、ロボット操縦を通じて知ってもらいたいというのが彼らの企画意図でした。

▲学園内にあるデコボコゾーン。リヤカーの車輪がハマりそう(左)。ダンボールボディのリヤカーロボ。持ち手のワイヤーがいい味だしてます。ボディは2段になっていて下部分に電池ボックスやプログラミングツールを隠し、タイヤ位置も絶妙で、まさにリヤカーロボ(右)
リヤカーロボに野菜をのせて、フィールドを運ぶ操縦体験です。スタッフは、この日初めてフィールドを見て「あれ、坂道の勾配がずいぶん低いな」という第一印象でしたが、やってみたら、この坂道で野菜が落ちる、落ちる(笑)。なるほどという絶妙勾配に仕上げられていました。打ち合わせ時には「何秒で運べるか」というタイムアタックもやろうかという話もあったのですが、「みんな操縦して楽しいみたいだから」とシンプルなルールにしたとのこと。経験をすぐに取り入れて、みんなが楽しめるロボゲームにしたようです。いいですねぇ。

▲操縦体験のフィールドはフロアマットと段ボールギミックで手づくり。これまた、絶妙な勾配の坂道と、絶妙な位置にトラップとなるギミックが置かれています。いろいろ試して考えたんだろうことが伝わってきます
高校生たちは、操縦体験だけでなく、スクラッチのプログラミング画面に興味津々だったり。小さなお子さんが遊んでくれたり。「もう一回やっていいですか?」と、(多分)中学生が何度もチャレンジしてくれていたり。とても好評いただいたようです。よかった!おつかれさまでした! いつか一緒に、自由学園でCO-SAKUロボコンやりたいです。
社会と向き合うとは?
超本格高校生インターンプログラム「飛び級社会人」では、高等部2年・3年生全生徒が45もの企業・団体へとインターンにチャレンジしてきたそうです。受入先ごとに、その学びを共有するプレゼンテーションがなされました。コーサク室にきてくれた3人が発表してくれた学びの言葉を、ほんのちょっぴりご紹介します。
課題へのアプローチの多様さに驚きました。最高学年になり学内の話し合いの場が多くなりましたが、どうしても自分の視点だけで考えたり、1つの答えを出そうとしてしまいます。ゴールへの道は1つではなくて。全員で向き合うことで、新しい道が見えてくることもあるということを学びました。
シモキタのまちの地域の人のつながりを実感。商店街同士が強くつながりまちの活気を生み出していました。シモキタロボフェスでは、ロボットという1つのものに対してまちの人たちが1つになって楽しんでいました。ロボットの技術や知識だけでなく、人とのつながりや組織運営を学び、ロボティクスコンテンツの奥深さを知りました。
「社会の中で自分は小さな存在であり、現実はそう簡単に変わらない」という葛藤を抱えていたとき、コーサク室で出会った大学生が「自分でできることをやるしかないのは、どこの社会でも同じだよ」と話してくれました。心の中でどこかで求めていた言葉で、その後の生活活動の軸となりました。
コーサク室にとっても、高校生の皆さんからたくさんの気づきをいただきました。無意識に設定してしまっていた「こうでなくちゃ」「きっと、こうしたいに違いない」という思い込みに気づかされたことも多々。常に「役に立てているのかな、楽しんでくれているかな、大丈夫かな」と不安がいっぱいでドキドキしていたのが正直なところですが、発表を通じてこんな宝物のような言葉をいただいて、本当に感激しています。皆さんが言葉にしてくれた学びは、そのまま私たちの学びでもあります。コーサク室も頑張らなくちゃ。
下北沢を案内してくれた商店街の方は、「今年もロボフェスやろう!」と応援してくれています。皆さんと話をしてくれた大学生の一人は、行きたかった企業へ就職が決まり、自分のやりたいことを実現する一歩を踏み出すことになりました。皆さんの発表を、これまで協力くださった皆様へ、お伝えします。
一足早い春のような暖かさだったこの日、学園内は紅白の梅が咲きほこり、生徒さんたちが伸び伸びと広い敷地を走り回っていました。芝生では、ギターを片手に歌う女の子たちの姿や、のんびりとお昼寝をする姿も見られました。一緒に連れて行ったスタッフの息子くんも、芝だらけになって転がっていました。3人の高校生たちが友達と過ごしている時の柔らかな表情は、あまりコーサク室では見られなかった表情でした。緊張していたんでしょうね。
皆さんが、学園での生活や「飛び級社会人」のような機会に育まれ、社会と向き合いながら自分らしく一歩一歩進まれていくことに、心よりエールを贈ります。
社会と向き合うことは生きていく上で避けることはできないし、うまくいかないことだらけです。けれど誰もが社会の一員であり、社会をどうしていくかという責任は、一人ひとりが担っていくものではないでしょうか。これからの私たちは、自ら社会を主体的にデザインすることをより一層求められると同時に、そのこと自体をエキサイティングに楽しみ建設的に進めていくための環境は、人生の先輩たちが豊かに築いてくれていると思います。コーサク室でさまざまな皆さんと出会い、進化する技術を軽やかに身につけ使いこなす若い世代を目の当たりにしながら、そんなことを感じています。
他の発表も見せていただいて、それぞれ本当に素晴らしい経験価値を持ち帰ってきたことが伝わってきました。「学びの共有会」という名前のとおり、多くの生徒さんの学びを共有させていただいた充実した時間でした。
自由学園の先生方、本取り組みに尽力された関係者の皆様、素晴らしい機会をご一緒させていただき、ありがとうございました。
また、コーサク室で会いましょう!